会陰ヘルニア 症例①

会陰ヘルニアは、骨盤隔膜(骨盤底を支える筋肉および筋膜)が弱くなり、直腸や膀胱などが外側に逸脱してしまう病気です。



トイ•プードル  避妊雌 15歳の一例です。

『何度もトイレに行くがおしっこが出ない』とのことで来院されました。



触診を行うと左側の会陰部に直腸および膀胱の脱出を認めました。

エコー検査では会陰部皮下に膀胱の脱出を認めました。赤印部(ヘルニア孔)で膀胱が変形しているのが確認できます。

エコー検査 会陰ヘルニア 膀胱脱出




レントゲン検査でも会陰部への膀胱脱出を認めました。

会陰ヘルニア 膀胱脱出




以上の検査結果より『会陰ヘルニア』と診断しました。

通常犬の会陰ヘルニアは、中〜高年齢で未去勢の小型〜中型犬に多発する病気です。その原因として遺伝的素因、性ホルモンの関連、解剖学的な欠陥などが挙げられます。




今回の症例は以前から慢性気管支炎の治療を行っており、咳のコントロールに苦慮している患者さんでした。15歳という年齢的な筋肉の衰えと咳による腹圧の上昇も発症に関係していると考えられます。




会陰ヘルニアの治療法は手術(ヘルニア整復術)と内科治療(対症治療)に分けられます。

内科治療では、便を柔らかくする薬の服用や浣腸などを行います。
特に重度の排便困難の患者さんには手指などで便を掻き出す治療を行うこともありますが、この場合には直腸の穿孔を起こす可能性があります。
直腸穿孔を起こした場合には、腹腔内に便が漏れ出てしまうため、重篤な状態に陥るこも少なくありません。



また、今回のように膀胱が脱出して排尿障害を引き起こした場合には腎不全などの合併症で致死的な経過をとることもあります。



今回の症例では高齢で麻酔のリスクは高いものの、病状の緊急性が高いことから手術(ヘルニア整復術)を行うこととしました。



手術ではメッシュを使ってヘルニア孔を閉鎖しました。
会陰ヘルニアでは術後の再発例が少なくないため、様々の術式が紹介されています。メッシュを使った方法では比較的再発が少ない反面、感染のリスクがあります。


ヘルニア孔の確認 腹腔内の脂肪の脱出
メッシュにてヘルニア孔の閉鎖中




15歳と高齢ですが、全身麻酔も乗り切ってくれました。
術後の合併症もなく、排尿もスムーズに行えるようになりました。

まだまだ元気に長生きしてくれることを願っています。



   
大和市の花岡動物病院
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