腫瘍

犬の皮膚肥満細胞腫 会陰部皮膚に発生した肥満細胞腫

犬 肥満細胞腫

犬の肥満細胞腫とは?

犬の肥満細胞腫は普段の診療の中でもよく遭遇する悪性腫瘍の1つです。
犬では皮膚にできる腫瘍で最も発生の多い腫瘍です。
全ての悪性腫瘍のうちで2番目に多いとも言われています。

犬の肥満細胞腫 まとめ肥満細胞腫とは? 肥満細胞腫は中〜高齢の犬でよく見られる、皮膚にしこりができる病気です。 犬では皮膚にできる腫瘍の7〜21%...

会陰部に発生した肥満細胞腫の1例

 

M.ピンシャー ,13歳齢,未避妊メス

飼主さん
飼主さん
最近、陰部が腫れてきた 。
発情??

会陰部皮膚の一部が膨らんでいて、赤みがある状態でした。

犬 肥満細胞腫

検査

腫瘍の可能性があるため、まずは細胞の検査(細胞診)を行いました。

採血などに使う細い針を病変部に刺して、細胞を採取します。
採取した細胞を染色して顕微鏡で観察することで、腫瘍の可能性を判断できます。

細胞診の利点は、動物への負担が少なく、かつ素早く検査ができるところです。
麻酔の必要もありません。

ただし、病理検査と違って診断を確定させるものではありません。
腫瘍の可能性が高いか低いかを判断して、追加検査や治療の方針を決めていくための検査です。

獣医
獣医
リンパ腫、メラノーマ、肥満細胞腫など一部の腫瘍は細胞診で診断の確定ができます。
細胞診:肥満細胞腫
犬 肥満細胞腫

 

細胞診の結果『肥満細胞腫』と診断しました。

肥満細胞腫は円形の細胞内に紫色の顆粒があることが特徴です。

治療

犬の皮膚肥満細胞腫は悪性腫瘍のひとつで、その悪性度や転移の状況によっては命に関わる病気です。
ただし悪性度が極端に高くなく、転移がない場合には手術で根治を目指すことができます。

犬の皮膚肥満細胞腫の悪性度は大きく3段階(グレード1〜3)に分けられます。

  1. グレード1
    👉悪性度は低い
    👉治療は通常手術のみ
    👉手術で完治を見込める
  2. グレード2
    👉悪性度は高い
    👉治療は基本的には手術
    抗がん剤治療や放射線治療を組み合わせることもある
    👉手術で完治を目指せるが、再発や転移が起きることもある
  3. グレード3
    👉悪性度は非常に高い
    👉手術+抗がん剤治療、状況に応じて放射線治療
    👉完治が難しい場合が多い

この悪性度分類は、手術で摘出した組織を病理検査に出すことで判定します。

獣医
獣医
2016年には細胞診でグレード分類する論文が発表されていますが、現状は一般的でありません。

したがって、犬の皮膚肥満細胞腫の治療でまず考えるのは手術です。
手術で腫瘍を完全に取りきれるかがとても重要です。

今回の症例もまず手術を行って、病理検査の結果によっては追加治療を検討することとしました。

肥満細胞腫を手術で取り切るためにはマージンを3cm取ることが推奨されています。
(最近の報告ではマージンはもっと小さくでもいいという見解もあります。)

獣医
獣医
マージンとは腫瘍周囲の正常に見える部分のことを言います

しかし、今回の症例の場合には腫瘍の発生している場所がすごく厄介でした。

腫瘍は会陰部にあり、マージンを十分に含めて切除した場合には排尿障害を起こす可能性があるからです。

そこで、機能障害を起こさない程度にマージンを確保しながら腫瘍を切除していきました。
尿道開口部に近い部分はどうしても十分なマージン確保が難しいため、病理検査で腫瘍の取り残しがある場合には、放射線治療や抗がん剤などの追加治療を考えないといけません。

手術後の様子
犬 肥満細胞腫 手術後

幸い、病理検査では『グレード1 腫瘍の取り残しはなし』との結果でした。
今回の手術で根治を望めます。

手術後1ヶ月の様子
犬 肥満細胞腫 手術後 

手術後1年以上経ちますが、腫瘍の再発なく元気に暮らしています。

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