犬の胆嚢粘液嚢腫 まとめ

胆嚢粘液嚢腫は中〜高齢で発生することが多く、症状が進行してしまうと胆嚢破裂を引き起こしてしまうこともある危険度の高い病気です。初期にはあまり症状が出ないことも多く、健康診断などで発見されることも多い病気です。

目次

犬の胆嚢粘液嚢腫とは?

胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢という胆汁を貯める袋にゼリー状の物質が溜まってしまう病気です。症状が進行すると、胆嚢炎、閉塞性黄疸、胆嚢破裂などの深刻な病気を併発します。特に胆嚢破裂による胆汁腹膜炎は命に関わる緊急性の高い病気です。

犬の胆嚢粘液嚢腫の原因は?

確かな原因はまだ解明されていません。

犬の胆嚢粘液嚢腫の発症は?

  • 中〜高齢の犬
  • 好発犬種
    ・シェットランド・シープドック
    ・ミニチュア・シュナウザー
    ・アメリカン・コッカー・スパニエル
  • 国内で飼育頭数の多い小型犬にも発生が多い
    ・チワワ
    ・ポメラニアン  など

犬の胆嚢粘液嚢腫の症状は?

  • 食欲不振
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 沈鬱
  • 黄疸
  • 腹部痛

胆嚢粘液嚢腫は無症状の期間も長く、症状が出る頃には病気が進行しているケースが多いです。

犬の胆嚢粘液嚢腫の診断は?

  • 超音波検査
    ・『キウイフルーツ』のようなエコー画像
    ・胆泥症との区別が困難な場合もある
  • 血液検査
    ・黄疸(T-billの上昇)
    ・肝酵素の上昇(ALT、ALP、AST、GGT)
  • レントゲン検査
  • 腹水検査
    ・胆汁性腹膜炎のチェック

超音波検査:胆嚢粘液嚢腫

胆嚢粘液嚢腫

犬の胆嚢粘液嚢腫の治療は?

  • 手術
    ・根治的な治療
    ・周術期に亡くなってしまうケースや膵炎などの合併症の割合が高いなど、比較的リスクの高い手術
  • 内科治療(薬での治療)
    ・通常は症状がなく、偶然見つかった場合に行う。
    ・ウルソデオキシコール酸の投与、低脂肪食の給与
    ・根治的な治療ではないので、注意深い経過観察が必要

犬の胆嚢粘液嚢腫の治療の見通し(予後)は?

  • 外科治療(胆嚢摘出術)によって完治は期待できるが、手術のリスクは高い
  • 特に胆嚢破裂、胆汁漏出による腹膜炎のある場合には手術の必要があるが、周術期(手術前〜手術後)に亡くなってしまう割合は20〜40%といわれる
  • 症状がなく、内科治療で経過観察する場合には、動物病院で定期的なモニタリングが重要
  • 内科治療で経過観察中に急変する可能性もある
  • 症状が出てからの手術はリスクが高くなる

2019年に発表されたMax Parkanzkyらの胆嚢粘液嚢腫の予後に関する論文では
①外科手術を行った犬の生存中央期間は1802日
②内科治療で管理した犬の生存中央期間は1340日
③内科治療の後に外科手術を行った犬の生存中央期間は203日
との報告がある。

胆嚢粘液嚢腫は無症状の場合から緊急性の高い場合まで様々なので、一概にこのデータに当てはめることはできません。症状が強くなってから手術した場合にはリスクが非常に高いことが考えれらます。

  • Small Animal Internal Medicine 4th
  • Max Parkanzky,Janet Grimes,Chad Schmiedt,Scott Secrest,Andrew Bugbee(2019).Long-term survival of dogs for gallbladder mucodele by cholecystectomy,medical management,or both.journal of Veterinary Internal Medicine
  • SA medicine Vol.15 No4 2013 『胆嚢粘液嚢腫のインフォームドコンセントのために』
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