犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病) まとめ

犬の副腎皮質機能低下症 アジソン病

犬のアジソン病(副腎皮質機能低下症)は副腎のホルモンが不足する病気です。〝急性アジソンクリーゼ〟と呼ばれるショック状態を起こすと命に関わることもあります。

目次

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)とは?

犬の副腎皮質機能低下症は副腎ホルモン(グルココルチコイド、ミネラルコルチコイド)の分泌が減ってしまう病気です。典型的な副腎皮質機能低下症(アジソン病)ではグルココルチコイドとミネラルコルチコイドの両方が不足します。グルココルチコイドのみが不足する場合には、『非定型アジソン病』と呼ばれます。典型的なアジソン病の原因は免疫異常によるものと考えられていますが、はっきりとは解明されていません。

『非定型アジソン病』は電解質異常がなく、これといった典型的な症状がないので診断がとても難しいです。

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)の発症は?

  • 若齢〜中年齢(2ヶ月〜12歳 中央値4〜6歳)に多い
  • 非定型アジソン病ではやや高めの年齢での発症が多い
  • メスで多い

猫での発生は稀です。

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)の原因は?

典型的なアジソン病の原因
  • よく分かっていない(特発性)
  • 『免疫が関連した副腎皮質の破壊?』と考えられている
非定型アジソン病の原因
  • 副腎原発の場合
    👉典型的なアジソン病の初期段階
    👉薬剤(トリロスタンなど)
    👉原因不明
  • 続発性(下垂体からのACTH分泌減少)
    👉下垂体や視床下部の炎症や腫瘍
    👉グルココルチコイドの長期投与

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)の症状は?

  • 元気消失
  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 虚弱
  • 体重減少
  • 震え
  • 多飲多尿
  • 腹痛
  • ショック(アジソンクリーゼ)
  • アジソン病の症状は副腎機能の約90%を失うと現われる
  • 病気の初期には、副腎の機能が少し残っているので、ストレスがかかった時だけ発症する
  • 病気が進行して、ショック状態(アジソンクリーゼ)になると命にかかわる

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)の診断は?

  • 血液検査
    ・非再生性貧血
    ・電解質異常(高K、低Na、低Cl)
    ・腎前性高窒素血症(BUNの上昇)
    ・高リン血症(Pの上昇)
    ・低血糖(GLUの低下)
  • ホルモン検査
    ・ACTH負荷試験
  • 心電図
    ・高Kによる心電図の異常
  • エコー検査
    ・副腎の萎縮
  • レントゲン検査
    ・小心症

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)の治療は?

とにかくアジソンクリーゼから脱出すること!!

アジソンクリーゼの治療
  • 点滴治療
    ・低血圧の改善
    ・循環血液量減少の改善
    ・電解質異常の改善
    ・代謝性アシドーシスの改善
  • ホルモン補充
    ・ミネラルコルチコイドの補充
    ・グルココルチコイドの補充
アジソンクリーゼを乗り切れたら
  • ホルモン補充を継続
    ・ミネラルコルチコイド剤
    ・グルココルチコイド剤

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)の治療のみとおし(予後)は?

アジソンクリーゼ(急性ショック状態)は、命にかかわる重篤な状態で、緊急的な治療が必要となります。アジソンクリーゼに対して適切な治療ができると、多くが24〜48時間以内に症状と血液検査の数値の改善が見られます。さらに状態が安定して飲み薬でのコントロールが可能となれば、予後は非常に良いとされています。ただし、生涯にわたる飲み薬での管理や定期的な検査が必要です。しっかりと病気のコントロールができれば、ほとんどの場合に本来の寿命を全うすることができます。とにかく、アジソンクリーゼを起こす前に診断して、治療を開始することが重要です。最初はストレスがかかる時にだけ症状が見られるので、ホテルやトリミング、旅行などのストレスがかかりやすい時に明らかに調子を崩すようであれば、一度検査を受けてみましょう。

  • Small Animal Internal Medicine 4th
  • 犬と猫の内分泌疾患ハンドブック
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