腎臓・泌尿器の病気

犬の慢性腎不全(慢性腎臓病:CKD) まとめ

犬 慢性腎不全
飼主さん
飼主さん
うちの犬が最近よく吐きます。

病院では慢性腎不全かもといわれました。

獣医
獣医
犬の慢性腎不全は進行のステージに合わせた治療が必要です。

早期発見・早期治療が大切な病気です。

まずは腎臓の働きについて

犬猫 腎臓

腎臓は体の中で主に以下の3つの働きをしています。

  1. 体に不要な物質を排泄

    👉蛋白質代謝の最終産物である窒素化合物の排泄(尿酸、尿素、クレアチニン)
    👉糖質、脂質の中間代謝産物の排泄
    (乳酸、アセトンなど
    👉体内の解毒作用で生じた物質の排泄
    👉血液に溶けている異物の排泄

  2. 体液のバランスを調節

    👉体液の浸透圧を調節
    👉体液量を調節
    👉体液のpHを調節
    👉電解質組成の調節

  3. 内分泌機能(ホルモンの分泌)

    👉レニンの分泌(血圧の調整に関わるホルモン)
    👉エリスロポエチンの分泌
    (赤血球の産生を促すホルモン)
    👉活性型ビタミンDの合成分泌
    (主にカルシウム量を調節するホルモン)

犬の慢性腎不全(慢性腎臓病)とは?

犬猫 慢性腎不全

慢性腎不全(CKD)は、様々な原因で腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。

猫ほどの発生率ではありませんが、高齢の犬で比較的多い病気です。

慢性腎不全では腎臓の機能の約3分の2が失われた頃から症状が現れるとも言われており、異常に気づいた時には慢性腎不全が進行していたケースも少なくありません。

失った腎機能は治療で取り戻すことは出来ないため、病気の進行を緩やかにすること、残された腎機能を大切に使っていくことなどが治療の目的となります。

出来るだけ早期に発見して、治療を開始することが大切です。

犬の慢性腎不全(慢性腎臓病)の原因は?

慢性腎不全は年齢とともに現れる病気で、それぞれの慢性腎不全の原因を特定できないなことが多いです。

慢性腎不全の原因となりうる病気
  • 免疫疾患
    👉全身性エリテマトーデス
    👉糸球体腎炎
  • アミロイド症
  • 遺伝性・先天性疾患
    👉腎低形成・腎異形成
    👉多発性嚢胞腎
    👉家族性腎症
    ・バセンジー(近位尿細管再吸収障害)
    ・コッカー・スパニエル(Ⅳ型コラーゲン欠損)
    ・サモエド(Ⅳ型コラーゲン欠損)
    ・ドーベルマン(家族性糸球体症)
    ・ラサ・アプソ(腎異形成)
    ・シー・ズー(腎異形成)
  • 症性あるいは伝染性疾患
    👉腎盂腎炎
    👉レプトスピラ症
    👉腎結石
  • 腫瘍
  • 腎毒性物質
  • 尿路閉塞
  • 特発性
    👉原因が分からない

 

獣医
獣医
慢性腎不全を引き起こす病気はたくさんありますが、犬では原発性糸球体疾患が主な原因になっているといわれています。

犬の慢性腎不全(慢性腎臓病)の症状は?

  • 体重減少
  • 食欲不振
  • 多飲多尿
  • 削痩
  • 脱水
  • 嘔吐
  • 非再生性貧血
獣医
獣医
慢性腎不全の合併症として上皮小体機能亢進症や胃炎などがあります。

この2つは腎臓がホルモンを作ったり、ホルモンを分解したりする機能の低下によって引き起こされます。

獣医
獣医
上皮小体機能亢進症はカリシトリオールの産生低下と上皮小体ホルモンの代謝低下により起こります。

胃炎(胃潰瘍)はガストリンの代謝低下により起こります。

犬の慢性腎不全(慢性腎臓病)の診断は?

獣医
獣医
特にSDMAは比較的早期に腎機能の低下を検出できる優れたマーカーです。
犬猫 SDMA
犬猫の血液検査 SDMA 〝腎不全の早期発見のために〟犬猫の血液検査SDMAについて動物病院の獣医師が解説しています。SDMAとは?・Cre(クレアチニン)との比較・IRIS慢性腎臓病ガイドラインについて。...
獣医
獣医
犬猫の慢性腎不全はIRISのステージ分類を参考に進行度を判定します。

IRISとは腎・泌尿器疾患専門の研究グループです。

参照 IDEXX社 CKDガイドライン

犬の慢性腎不全(慢性腎臓病)の治療は?

  • 全てのステージで食事療法や飼育環境の改善が中心的な治療となる
  • 原因疾患の検出や治療が重要
    (原因が分からないことも多い)
  • 病気の進行に応じた治療が必要となる
ステージ1の治療
  • 原因疾患の検出とその治療
    (細菌性腎盂腎炎や腎結石など)
  • 高血圧の治療
    👉収縮期l血圧が持続的に160を超える場合
    👉アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)
    カルシウムチャネルブロッカー など
  • 蛋白尿の治療
    👉持続的な尿蛋白が見られる場合(UPC>0.4)
    👉腎療法食(低蛋白食)
    👉アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)
  • リン(IP)濃度を<4.6mg/dlに維持する
    👉腎療法食(低リン)
    👉リン吸着剤
  • 脱水の改善
    👉新鮮な水がいつでも飲めるような環境
ステージ2の治療
  • ステージ1の治療を継続
  • 腎臓療法食
  • 低カリウム血症の治療
    👉カリウム剤(サプリメントなど)
  • SDMA≧25の場合にはステージを過少評価している可能性
    👉ステージ3の治療を検討
ステージ3の治療
  • ステージ2の治療を継続
  • リン(IP)濃度を<5.0mg/dlに維持する
  • 貧血の治療
    👉PCV<20%の場合
    👉エリスロポエチン製剤の投与
    (投与すると体内で抗体を作るため何度も使えない)
    👉栄養管理
  • 嘔吐・食欲不振・悪心の治療
    👉制吐剤
    👉食欲刺激剤(ミルタザピンなど
  • 積極的な脱水の改善
    👉静脈点滴・皮下点滴
  • SDMA≧45の場合にはステージを過少評価している可能性
    👉ステージ4の治療を検討
ステージ4の治療
  • ステージ3の治療を継続
  • リン(IP)濃度を<6.0mg/dlに維持する
  • PEGチューブ(胃瘻チューブ)の設置を検討
    👉投薬を容易にする
    👉栄養管理
    👉脱水の管理

犬の慢性腎不全(慢性腎臓病)の治療の見通しは?

猫の慢性腎不全は慢性疾患で完治は望めません。

しかし、慢性腎不全のステージを正確に判断して、適切な管理・治療を行うことで生活の質の改善や生存期間の延長に繋がります。

慢性腎不全の末期では透析(血液透析/腹膜透析)や腎移植などが必要となりますが、これらが実施できる病院が少ないことやドナーの問題などで標準的な治療となっていないのが現状です。

慢性腎不全の治療を進めていくなかで、最終的にどこまでの治療を行うのかをご家族で考えておく必要があります。

 

  • Small Animal Internal Medicine 4th
  • IDEXX社 CKDガイドライン
  • 『慢性腎臓病のインフォームドコンセントのために』
    SA Medicine Vol.14 No.4 2012
  • シンプル生理学